崖崩れを巡る法律関係−理論と判例−

  • 2007.07.25 Wednesday
  • 21:35
「理論と判例」って大きく出ましたが、ま、ご愛嬌ということで。

台風4号により方々で崖崩れが発生しましたが、そのためか、台風通過後の検索語句に「崖崩れ 責任 判例」類似のものが数件ありました。
私も崖下に住んでいる身、以前から興味があったこともあり検索してみましたが、なかなか、というか全然ヒットしなかったですね。

そこで、これから台風シーズンを迎えることもあり、崖崩れを巡る法的関係について、ど素人ながら思料してみたいと思います。
(ヒマな税理士、というわけではないんですがね、6月決算を抱えていますし...)

崖崩れを巡る法的関係について明文の規定があるかといいますと、私の知る限り存在しません。
自分の土地内で崖崩れが起きても、当然ながら損害賠償云々の話にはなりません。(自分で自分に請求する、なんてことはないですよね)
自分の土地と他人の土地との境界に崖があるからこそ問題となるわけです。

そこで民法の出番となります。
民法には隣近所の争いごとに関する規定があります。いわゆる「相隣関係」と称せられるもので、民法第2編物権の第3章所有権の第1節第2款で定められています(第209条〜第238条)。

例えば、
隣から自然に水が流れてきても妨げてはいけない(214条)とか、隣の竹の竹の子が自分の土地に生えたら切り取っていい(233条)とかいうものです。
ところが、そこには崖崩れについては何も規定していません。

じゃあどうしようもないのかと言いますと、そんなことはありません。物権の本質に基づいて認められる権利を行使することができます。

「物権」とは特定の独立の「物」の上に成立する権利で、一定の物を直接支配する権利であると同時に排他的な権利です。
(排他的というのは、例えば土地の場合、所有権が私にある場合、他人はその土地について所有権を行使できない、そんな意味合いです。)

「物権」に対して「債権」という概念がありますが、債権とは債権者(権利を有する人)がある人に対して一定の給付(行為)を要求できる権利のことです。
例えば、金を貸している相手に対して、金を返せ!と請求できる権利、と言ったらわかりやすいでしょうか。

なお、「物」とは「有体物」のことです(85条)。
じゃあ「有体物」とは何かといいますと、固体、液体、気体のような形のあるもののことを言います。
かつて「電気は有体物か」争われたことがありました。我が国がまだ貧しかった時代、電柱から勝手に線を引いて電気を使った(盗用した)人がいたんですね。

物権は上のように「直接支配性」及び「排他的権利性」という強力な性質を有しています。
物権のこのような性質に基づいて、その権利を保護することを目的として、いわゆる「物権的請求権」が認められています(明文では規定されていません)。

物権的請求権とは、(ちょい難しい文章になりますが)
物権を有する者は、物権の円満な状態が妨害され、あるいは妨害される虞がある場合、その妨害の排除または予防のために、相手方に対して一定の行為を請求できる権利であると言われます。
なお、物権的請求家には、
「物権的返還請求権」、「物権的妨害排除請求権」、「物権的妨害予防請求権」の3つがあります。

要するに、ぶっちゃけて言えば、自分の物が他人によりどうのこうのされるのを断固認めない権利、といえるかもしれません。

民法に規定がないにもかかわらずなぜ認められるかといいますと、
物権よりも弱い(仮の権利とも言われます)占有権(188条)に占有訴権(197条以下)が認められているし、本権の訴(202条)すら認めているのであるから、とされます。
そもそも物権的請求権を認めないと所有権を認める意味がないじゃないか、ということになります。
(ここらは軽く流して下さいネ)

ようやく前段の説明が終わりました。
本論は次回に!


参照条文

第214条
 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。

第233条
 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
 2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

第85条
 この法律において「物」とは、有体物をいう。

第86条
 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
3 無記名債権は、動産とみなす。

第175条
 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

第176条
 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

第177条
 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第178条
 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

第180条
 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

第188条
 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

第198条
 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。

第199条
 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

第200条
 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

第202条
 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

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