身元保証人の責任(番外編)…鹿児島地裁判決

  • 2007.07.05 Thursday
  • 10:23
昨日、鹿児島地裁にてA自治体元職員に対する判決がなされました。

職場での業務上横領並びに職場への放火に対して、懲役4年6月(求刑6月)の実刑判決が下されました。
詳細(たいして詳しくないけど)はKTSニュース;

横領と放火の元鹿屋市職員に実刑判決 :: 7月4日(水)15時42分
をご覧下さい。

A自治体は、本人並びに2名の身元保証人に対して被害額約3,500万円の損害賠償請求訴訟を提起する方向です。
まだ議会の承諾(訴訟には費用がかかり、予算(多分予備費かな?)の承認が必要になります)は得られてなかったと思いますが、
今回の刑事判決(控訴は無いと見てよいでしょう)を踏まえて、民事訴訟に進むことは確実視されます。

「身元保証人の責任」を争った判例・判決、結構あります。例えば、
・神戸地裁昭和61年9月29日判決
・東京地裁平成4年3月23日判決
・仙台高裁平成4年4月17日判決 等など
              
ただ、判決そのものは最高裁のデータベースでもヒットしません。
(やり方が悪いのかもしれません)
『判例時報』には掲載されているんですが、残念ながら『判例時報』がありません。
近くの大学といえば鹿屋体育大学、まずないでしょう。
鹿児島市まで足を伸ばせば鹿児島大学法文学部、当然、書庫に眠っているでしょう。が、部外者に閲覧させてくれるかどうか...?

これが東京にいるときだったら、三田の慶大図書館ですんなり閲覧できるんですけどね。
こういうとき田舎にいることの不便さを実感します。でも、東京じゃネコとのんびり暮らせないですし、やっぱり田舎かな。

判決(原文)、何とか入手したいと考えています。

放火と横領…身元保証人の責任

  • 2007.06.18 Monday
  • 16:30
では、身元保証人に関する法律(昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律))、いわゆる身元保証人法の条文に目を通してみましょう。

身元保証人になる可能性のない方には何の役にも立ちませんが、同保証人になる可能性のある方や同保証人を要求する側の方には必須かも知れません、この知識。

何しろ古い法律で、
昭和8年4月1日成立、同年10月1日施行ということで、当然条文は旧仮名遣いとなっています。
そこで、正確さには程遠いかもしれませんが、私の「意訳」をつけたいと思います。

第一条
 引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニヨリ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス

名称にかかわらず、期間を定めないで被用者(従業員や職員等のことですね)の行為によって使用者(雇い主)の受ける損害を賠償することを約束する「身元保証契約」は、契約の成立日より3年間有効である。ただし、「商工業見習者」の身元保証契約についてはその有効期間は5年間とする。

定義と有効期間の定めが一緒になっているため読みにくい条文となっています。税法に比べれば大したことはないですが。

・身元保証契約は従業員の行為により雇い主が損害を被った場合の損害賠償を約する契約のことですよ。
・その有効期間は原則3年間、ただし、「商工業見習者」の場合は5年間ですよ。
ということになるかと思います。

「商工業見習者」って、現在は見習い期間(試用期間のことですね)が5年間もあるなんて考えられないですが、当時の社会背景を想定した場合、いわゆる「丁稚奉公」みたいなことを前提としたのかもしれません。
まあ、「商工業見習者」という文言にそれほど囚われる必要性はないかと思います。
「新規に入社した者」程度の理解でよいのではないかと思います。

第二条
 身元保証契約ノ期間ハ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ之ヲ五年ニ短縮ス
2 身元保証契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ

身元保証契約の期間は5年を超えることはできない。もしそれより長い期間を定めたときはそれを5年に短縮する。
2 身元保証契約は更新することができる。ただし、その期間は更新の時より5年を超えることはできない。


これはそのままご理解いただけるかと思います。要するに、当初にしろ更新にしろ「5年間」までだよ、ということですね。

第三条
 使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ

使用者は以下の場合には遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
1 被用者(従業員等)に業務上不適任または不誠実な行為があって、そのために身元保証人の責任が発生するおそれがあることを知ったとき
2 被用者の任務または任地を変更したために、身元保証人の責任が重くなりまたはその監督が困難になるとき


変な文章になってしまいましたが、ま、そういうことです。
今回のA自治体における横領及び放火事件に係る身元保証人の責任(損害賠償責任の有無、損害賠償額の算定等)を考えるとき、本条第1号の規定がモノをいうことになると考えます。

第四条
 身元保証人前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ将来ニ向テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得身元保証人自ラ前条第一号及第二条ノ事実アリタルコトヲ知リタルトキ亦同ジ

身元保証人が前条の通知を受けたときは、将来に向かって契約を解除することができる。
また、身元保証人本人が前条の事実を知ったときも同様に契約を解除できる。


これも重要な規定ですね。

第五条
 裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス

裁判所は、
身元保証人の損害賠償責任及びその賠償金額を算定するに当たっては、
被用者(従業員等)の監督に関する使用者の過失の有無、
身元保証人が身元保証をするに至った理由、
身元保証人が身元保証にあたり払った注意の程度、
被用者の任務または身上の変化その他一切の事情を
斟酌(考慮)する。


要するに、
裁判所は一切の事情を考えて身元保証人の責任を判断しなければならない、
ということになります。

第六条
 本法ノ規定ニ反スル特約ニシテ身元保証人ニ不利益ナルモノハ総テ之ヲ無効トス

本法(身元保証人に関する法律)の規定に反する特約で、身元保証人にとって不利益なものはすべて無効とする。

附則
 本法施行ノ期日ハ勅令(昭和8年 勅令第249号)ヲ以テ之ヲ定ム
 本法ハ本法施行前ニ成立シタル身元保証契約ニモ之ヲ適用ス但シ存続期間ノ定ナキ契約ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算シ第一条ノ規定ニ依ル期間其ノ効力ヲ有ス存続期間ノ定アル契約ニ付テハ本法施行当時ニ於ケル残存期間ヲ約定期間トス若シ此ノ期間ガ五年ヲ超ユルトキハ之ヲ五年ニ短縮ス

この附則は、この法律が成立した昭和8年以前に存在した身元保証契約の存続期間について定めたものです。
当然に5年間に拘っています。

どうでしょう?
大体お解かりになっていただけたでしょうか?

「事案の概要」、「適用条文の解説」とやってきましたので、いよいよ次回は「事案への充当」を行ってみようと思います。

ただでさえ「うっとおしい」梅雨どきに「うっとおしい」事案、少なくとも今日みたいに晴れ間が広がる日に取り組もうと思います。

放火と横領…身元保証人の責任

  • 2007.06.13 Wednesday
  • 21:33
だいぶ間が空いてしまいましたが、事態が進展しましたので再開します。
前回は5月の初めでしたので、事実の概要を再掲させていただきますと、

A自治体B保健相談センターに勤務するCは、
昨年6月から10月までに亘り、自治体内の複数の動物病院から徴収していた
狂犬病予防接種済票交付手数料や犬の登録手数料から現金約56万円を着服していたとして、業務上横領(刑253)の容疑で本年2月5日に逮捕され、同月23日に起訴された。

B保健相談センターでは、昨年10月9日夜、不審火により鉄筋コンクリート2階建の1階の事務所部分約100屬焼損したのであるが、
この件について、Cは2月26日、建造物侵入(刑130)と非現住建造物放火(刑109)の疑いで再逮捕された。

Cは、「横領で悩んでおり、仕事の遅れもあったため、火災で仕事が休みになればいいと思っ」て犯行に及んだということである。

なお、A自治体は職員の採用に当たって2名の身元保証人を要求することになっており、本件においても2名の身元保証人が存在する(1名は親)。

で、数日前の地元新聞に以下のような記事が掲載されていました。

自治体Aは元職員Cとその身元保証人(2名)に対して損害賠償請求を行っていくことを明らかにした。
刑事に関しては、4月18日に第1回公判が行われ、Cは横領と放火を認めた。続いて5月18日に横領金と遅延損害金が供託され、5月21日の第2回公判において検察が実刑6年を求刑した。
なお、7月4日に判決が言い渡される予定である。

自治体Aは、今後、公金横領及び放火による財産焼損に関し不法行為責任(民709)を根拠に損害賠償を請求していく予定である。
すなわち、
加害者Cについては、第一義的債務者として損害の全額を請求すると同時に、身元保証人2名についても、賠償責任の範囲を示談または訴訟により確定することが想定されている。

民法709条
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

身元保証人の一人、父親Dに対しては、過去3回(4/11、17、23)示談交渉が行われたということですが、被害総額約3,495万円とはかなり離れた金額であったようです。
もう一人の身元保証人Eには、6月8日時点、自治体Aからは何らの交渉もなされていないとのことでしたが、同新聞に以下のコメントが掲載されていました。

「放火行為まで予見できなかった(いわゆる「予見可能性」のことですね。 by reotaro )。放火は業務に関する行為ではない(確かにそのとおりですね。 by reotaro )。保証人になった経緯および予見可能性の問題から(よく勉強されたようです、この大隅半島ではめずらしい! by reotaro )、裁判になった場合は放火に対する賠償責任について争う。」

注意深く読みますと、「放火に対する賠償責任について争う」とコメントされてますので、横領については身元保証人としての責任を負う、というお考えだと思われます。
コメントの前段にもありますように、「放火行為までは予見できなかった」というのは正当な言明かと私は考えます。

自治体職員の身元保証につき「放火」まで予見しろというのが土台無理な言い分ではないかと思います。
Eさんには是非とも法廷で闘っていただきたいと思います。

というのは、この自治体A、
実は、今から10年ぐらい前にもCが所属していた職場において、職員による動物病院からの手数料等に関する横領が発生したというのです。
その事件後にきちんとした対策が採られていたならこんな事件は起こらなかったはず、とも言えます。
ま、やる人はやるでしょうけどね。

先日、ねこのレオを動物病院に連れて行ったところ、2名の自治体職員が手数料かなんかのことで訪れていました。
うち1名は担当課とまったく異なる職域の職員だということで、現場に同行してチェックする体制になったとのことでした。
「遅きに失する」とは正にこのことです。

こういう体制を最初の事件後に構築していたならば、今回の、ある意味不幸な犯罪者を生み出すことはなかったかもしれません。
ましてや善意で引き受けた身元保証人の、ある意味、人生を、生活設計を狂わすこともなかったかもしれません。
法廷に立たされること自体、一般人には耐え難い労苦が強制されますからね。

今回の事件を受けて、
首長;減給10分の3、3ヶ月
助役;減給10分の2、3ヶ月
関係職員等;処分(内容不明です)
の処分が実施されたということですが、彼らにとってもある意味不幸な出来事だったかもしれません。
ここはそれ、最初の事件の後に何らの対策も講じなかった当時の幹部職員にも、不作為責任を取らせるべきではないかと思いますが、どうなんでしょうね?

それにしても、こんな事件が起きますと、身元保証人になる人はいなくなるのではないかと、(余計な)心配をしてしまいます。
私は絶対になりません! たぶん...

次回は、「身元保証に関する法律」を見て行こうと思います。


----------------------------------------------------------

こんな条文も知っていてよいかもしれませんね。

第710条
 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

第711条
 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

例の「博多湾車輌転落事件」の初公判が昨日行われましたが、いずれ民事でも争われることになるかと思います。
その際にはこの711条が根拠条文となるんでしょうか?
(特別法があるかもしれません)

それにしてもこのネーミング、ちょっとおかしくないですか?
車輌「転落」?

自分で落ちたんじゃなくって、突き落されたんでしょう!?

車輌「(追突)突き落し」の間違いでは! 
と思うんですが。

あと、法人、個人事業にかかわらず経営者たる者、常に頭の中に入れておくべき条文がこれ。

第715条
 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

いわゆる「使用者責任」です。

身元保証人の責任

  • 2007.05.09 Wednesday
  • 10:33
昨夜はボーとしていたのか、
アクセスカウンターの開始を2005年9月からとしていました。
正確には「2006」年9月からとなります。
というのは、
ブログを始めたのは2005年8月ですが、
2006年8月以前についてはデータを残していなかったためです。

8月以前を月に5000として約60,000、
累計では130,000近くになるのではないかと思います。
感謝!!
です。

さて、近隣の自治体でマスコミを賑わした以下のような事件がありました。
報道によりますと、

A自治体B保健相談センターに勤務するCは、
昨年6月から10月までに亘り、自治体内の複数の動物病院から徴収していた
狂犬病予防接種済票交付手数料や犬の登録手数料から現金約56万円を着服していたとして、業務上横領(刑253)の容疑で本年2月5日に逮捕され、23日に起訴された。

刑法253条
 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

ところで、
B保健相談センターでは、昨年10月9日夜、不審火により鉄筋コンクリート2階建の1階の事務所部分約100屬焼かれたのであるが、
この件について、Cは2月26日、建造物侵入(刑130)と非現住建造物放火(刑109)の疑いで再逮捕された。

第130条
 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

第109条
 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

なお、人が住んでいる建物に放火すると、特段に罪が重くなります。

第108条
 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

被疑者(とりあえず被疑者としておきます)Cは、「横領で悩んでおり、仕事の遅れもあったため、火災で仕事が休みになればいいと思っ」て犯行に及んだということですが、
このセリフ、過去に聞いたような...
「学校が燃えれば試験がなくなると思い」職員室に火を放った、
という事件が過去にありましたが、いやはや呆れてモノが言えません。

さて、当該自治体は職員の採用に当たって2名の身元保証人を要求することになっているそうです。
一般的に1名は親(親権者)、もう1名は他人、ということのようですが、
このような事件の場合、
親はともかく、他人である身元保証人はどのような責任を負担しなければならないのか? はたまた例外事項として負担しなくてもいいのか?

次回は、その辺のところを法的に検討してみたいと思います。


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