放火と横領…身元保証人の責任

  • 2007.06.13 Wednesday
  • 21:33
だいぶ間が空いてしまいましたが、事態が進展しましたので再開します。
前回は5月の初めでしたので、事実の概要を再掲させていただきますと、

A自治体B保健相談センターに勤務するCは、
昨年6月から10月までに亘り、自治体内の複数の動物病院から徴収していた
狂犬病予防接種済票交付手数料や犬の登録手数料から現金約56万円を着服していたとして、業務上横領(刑253)の容疑で本年2月5日に逮捕され、同月23日に起訴された。

B保健相談センターでは、昨年10月9日夜、不審火により鉄筋コンクリート2階建の1階の事務所部分約100屬焼損したのであるが、
この件について、Cは2月26日、建造物侵入(刑130)と非現住建造物放火(刑109)の疑いで再逮捕された。

Cは、「横領で悩んでおり、仕事の遅れもあったため、火災で仕事が休みになればいいと思っ」て犯行に及んだということである。

なお、A自治体は職員の採用に当たって2名の身元保証人を要求することになっており、本件においても2名の身元保証人が存在する(1名は親)。

で、数日前の地元新聞に以下のような記事が掲載されていました。

自治体Aは元職員Cとその身元保証人(2名)に対して損害賠償請求を行っていくことを明らかにした。
刑事に関しては、4月18日に第1回公判が行われ、Cは横領と放火を認めた。続いて5月18日に横領金と遅延損害金が供託され、5月21日の第2回公判において検察が実刑6年を求刑した。
なお、7月4日に判決が言い渡される予定である。

自治体Aは、今後、公金横領及び放火による財産焼損に関し不法行為責任(民709)を根拠に損害賠償を請求していく予定である。
すなわち、
加害者Cについては、第一義的債務者として損害の全額を請求すると同時に、身元保証人2名についても、賠償責任の範囲を示談または訴訟により確定することが想定されている。

民法709条
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

身元保証人の一人、父親Dに対しては、過去3回(4/11、17、23)示談交渉が行われたということですが、被害総額約3,495万円とはかなり離れた金額であったようです。
もう一人の身元保証人Eには、6月8日時点、自治体Aからは何らの交渉もなされていないとのことでしたが、同新聞に以下のコメントが掲載されていました。

「放火行為まで予見できなかった(いわゆる「予見可能性」のことですね。 by reotaro )。放火は業務に関する行為ではない(確かにそのとおりですね。 by reotaro )。保証人になった経緯および予見可能性の問題から(よく勉強されたようです、この大隅半島ではめずらしい! by reotaro )、裁判になった場合は放火に対する賠償責任について争う。」

注意深く読みますと、「放火に対する賠償責任について争う」とコメントされてますので、横領については身元保証人としての責任を負う、というお考えだと思われます。
コメントの前段にもありますように、「放火行為までは予見できなかった」というのは正当な言明かと私は考えます。

自治体職員の身元保証につき「放火」まで予見しろというのが土台無理な言い分ではないかと思います。
Eさんには是非とも法廷で闘っていただきたいと思います。

というのは、この自治体A、
実は、今から10年ぐらい前にもCが所属していた職場において、職員による動物病院からの手数料等に関する横領が発生したというのです。
その事件後にきちんとした対策が採られていたならこんな事件は起こらなかったはず、とも言えます。
ま、やる人はやるでしょうけどね。

先日、ねこのレオを動物病院に連れて行ったところ、2名の自治体職員が手数料かなんかのことで訪れていました。
うち1名は担当課とまったく異なる職域の職員だということで、現場に同行してチェックする体制になったとのことでした。
「遅きに失する」とは正にこのことです。

こういう体制を最初の事件後に構築していたならば、今回の、ある意味不幸な犯罪者を生み出すことはなかったかもしれません。
ましてや善意で引き受けた身元保証人の、ある意味、人生を、生活設計を狂わすこともなかったかもしれません。
法廷に立たされること自体、一般人には耐え難い労苦が強制されますからね。

今回の事件を受けて、
首長;減給10分の3、3ヶ月
助役;減給10分の2、3ヶ月
関係職員等;処分(内容不明です)
の処分が実施されたということですが、彼らにとってもある意味不幸な出来事だったかもしれません。
ここはそれ、最初の事件の後に何らの対策も講じなかった当時の幹部職員にも、不作為責任を取らせるべきではないかと思いますが、どうなんでしょうね?

それにしても、こんな事件が起きますと、身元保証人になる人はいなくなるのではないかと、(余計な)心配をしてしまいます。
私は絶対になりません! たぶん...

次回は、「身元保証に関する法律」を見て行こうと思います。


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こんな条文も知っていてよいかもしれませんね。

第710条
 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

第711条
 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

例の「博多湾車輌転落事件」の初公判が昨日行われましたが、いずれ民事でも争われることになるかと思います。
その際にはこの711条が根拠条文となるんでしょうか?
(特別法があるかもしれません)

それにしてもこのネーミング、ちょっとおかしくないですか?
車輌「転落」?

自分で落ちたんじゃなくって、突き落されたんでしょう!?

車輌「(追突)突き落し」の間違いでは! 
と思うんですが。

あと、法人、個人事業にかかわらず経営者たる者、常に頭の中に入れておくべき条文がこれ。

第715条
 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前2項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

いわゆる「使用者責任」です。
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