放火と横領…身元保証人の責任

  • 2007.06.18 Monday
  • 16:30
では、身元保証人に関する法律(昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律))、いわゆる身元保証人法の条文に目を通してみましょう。

身元保証人になる可能性のない方には何の役にも立ちませんが、同保証人になる可能性のある方や同保証人を要求する側の方には必須かも知れません、この知識。

何しろ古い法律で、
昭和8年4月1日成立、同年10月1日施行ということで、当然条文は旧仮名遣いとなっています。
そこで、正確さには程遠いかもしれませんが、私の「意訳」をつけたいと思います。

第一条
 引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニヨリ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス

名称にかかわらず、期間を定めないで被用者(従業員や職員等のことですね)の行為によって使用者(雇い主)の受ける損害を賠償することを約束する「身元保証契約」は、契約の成立日より3年間有効である。ただし、「商工業見習者」の身元保証契約についてはその有効期間は5年間とする。

定義と有効期間の定めが一緒になっているため読みにくい条文となっています。税法に比べれば大したことはないですが。

・身元保証契約は従業員の行為により雇い主が損害を被った場合の損害賠償を約する契約のことですよ。
・その有効期間は原則3年間、ただし、「商工業見習者」の場合は5年間ですよ。
ということになるかと思います。

「商工業見習者」って、現在は見習い期間(試用期間のことですね)が5年間もあるなんて考えられないですが、当時の社会背景を想定した場合、いわゆる「丁稚奉公」みたいなことを前提としたのかもしれません。
まあ、「商工業見習者」という文言にそれほど囚われる必要性はないかと思います。
「新規に入社した者」程度の理解でよいのではないかと思います。

第二条
 身元保証契約ノ期間ハ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ之ヲ五年ニ短縮ス
2 身元保証契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ

身元保証契約の期間は5年を超えることはできない。もしそれより長い期間を定めたときはそれを5年に短縮する。
2 身元保証契約は更新することができる。ただし、その期間は更新の時より5年を超えることはできない。


これはそのままご理解いただけるかと思います。要するに、当初にしろ更新にしろ「5年間」までだよ、ということですね。

第三条
 使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ

使用者は以下の場合には遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
1 被用者(従業員等)に業務上不適任または不誠実な行為があって、そのために身元保証人の責任が発生するおそれがあることを知ったとき
2 被用者の任務または任地を変更したために、身元保証人の責任が重くなりまたはその監督が困難になるとき


変な文章になってしまいましたが、ま、そういうことです。
今回のA自治体における横領及び放火事件に係る身元保証人の責任(損害賠償責任の有無、損害賠償額の算定等)を考えるとき、本条第1号の規定がモノをいうことになると考えます。

第四条
 身元保証人前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ将来ニ向テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得身元保証人自ラ前条第一号及第二条ノ事実アリタルコトヲ知リタルトキ亦同ジ

身元保証人が前条の通知を受けたときは、将来に向かって契約を解除することができる。
また、身元保証人本人が前条の事実を知ったときも同様に契約を解除できる。


これも重要な規定ですね。

第五条
 裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス

裁判所は、
身元保証人の損害賠償責任及びその賠償金額を算定するに当たっては、
被用者(従業員等)の監督に関する使用者の過失の有無、
身元保証人が身元保証をするに至った理由、
身元保証人が身元保証にあたり払った注意の程度、
被用者の任務または身上の変化その他一切の事情を
斟酌(考慮)する。


要するに、
裁判所は一切の事情を考えて身元保証人の責任を判断しなければならない、
ということになります。

第六条
 本法ノ規定ニ反スル特約ニシテ身元保証人ニ不利益ナルモノハ総テ之ヲ無効トス

本法(身元保証人に関する法律)の規定に反する特約で、身元保証人にとって不利益なものはすべて無効とする。

附則
 本法施行ノ期日ハ勅令(昭和8年 勅令第249号)ヲ以テ之ヲ定ム
 本法ハ本法施行前ニ成立シタル身元保証契約ニモ之ヲ適用ス但シ存続期間ノ定ナキ契約ニ付テハ本法施行ノ日ヨリ之ヲ起算シ第一条ノ規定ニ依ル期間其ノ効力ヲ有ス存続期間ノ定アル契約ニ付テハ本法施行当時ニ於ケル残存期間ヲ約定期間トス若シ此ノ期間ガ五年ヲ超ユルトキハ之ヲ五年ニ短縮ス

この附則は、この法律が成立した昭和8年以前に存在した身元保証契約の存続期間について定めたものです。
当然に5年間に拘っています。

どうでしょう?
大体お解かりになっていただけたでしょうか?

「事案の概要」、「適用条文の解説」とやってきましたので、いよいよ次回は「事案への充当」を行ってみようと思います。

ただでさえ「うっとおしい」梅雨どきに「うっとおしい」事案、少なくとも今日みたいに晴れ間が広がる日に取り組もうと思います。

コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>

本日の名言・格言

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

税務訴訟と要件事実論
税務訴訟と要件事実論 (JUGEMレビュー »)
平野 敦士,佐藤 善恵,村井 淳一,岡野 訓

recommend

recommend

租税訴訟実務講座
租税訴訟実務講座 (JUGEMレビュー »)
大野 重国,木下 雅博,東 亜由美

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

法と経済―効率性と社会的正義とのバランスを求めて
法と経済―効率性と社会的正義とのバランスを求めて (JUGEMレビュー »)
ジェフリー・L. ハリソン, Jeffrey L. Harrison, 上田 純子

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM