中小企業の事業継承円滑化に向けた提言 

  • 2007.07.17 Tuesday
  • 20:34
またまた間が空いてしまいました。
今回は、「遺留分への対応」についてです。

ここで「遺留分」とは、相続税法上定められた制度のことでして、「提言」は、
「配偶者や子供等に保障された最低限の資産承継の権利であり、原則法定相続分の半分」と説明されています。
「なんかよくわからない」というような声が聞こえてきそうです。

簡単(かなり乱暴な表現ですが)に言いますと、本人は遺言により家族はもとより誰にでも自分の財産を残すことができます。
「身内からよい扱いを受けなかったけど、親身になってくれた人がいたからその人に財産をあげよう」ということですね。

でも、これを自由に任せると、親族に困ってしまう人が出てくる可能性があります。身ぐるみ剥がされて(オーバーですね)出て行かざるを得ない、なんて、とんでもない状況になるかもしれませんからね。
そこで法は、残された親族にも一定の範囲内で財産の相続を保障することにしました。これが「遺留分」という制度です。

民法は次のように規定しています。

第1028条
 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 1.直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
 2.前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1


「提言」にある「原則法定相続分の半分」とはこういうことです。
すなわち、配偶者と2名の子供を前提としますと、法定相続は、
 配偶者;1/2
 子供 ;1/4と1/4 (1/4+1/4=1/2)
となります。
したがって、遺留分はそれぞれの1/2(1028条2号の場合)、すなわち、
 配偶者;1/4
 子供 ;1/8と1/8 (1/8+1/8=1/4) 
となります。

もっともこの遺留分は自動的に認められるものではありません。「遺留分減殺請求」により「オレの遺留分を返せよ!」と請求するまでは、遺言は有効ということになります。
ま、家族間で争う、という意味での「争族」になってしまうわけです。税理士としては、この争いには巻き込まれたくないですね。

第1031条
 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。


なお、遺留分減殺請求は裁判上の方法によらなくても、相手への意思表示だけでOKと解されています。
そうそう、遺留分減殺請求権には時効があります。要注意です!

第1042条
 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。


また、面倒なことには関わりたくない、という方のために「遺留分の放棄」という制度もあります。

第1043条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。


遺留分についてお分かりいただけたところで「提言」に進みますと、

1.生前に相続人全員の合意が得られる場合の相続紛争の未然防止

のために、「事業承継契約(仮称)スキーム」を創設する、としています。
これは、
生前に財産分配について合意が形成されても、現行法では、相続人が個別に遺留分放棄の許可を家庭裁判所で得なければならないため、
公証人の関与等による遺留分放棄手続の簡素化等を検討しようとするものです。

2.相続発生後の遺留分減殺請求権行使への対応

として、価額弁償の分割払い(遺留分の超過額を返す際に分割を認めろ、ということですね)や、
事業承継直後の遺留分減殺請求権の行使の一定期間の停止(事業を継いだばかりのときに余計な手間をかけさせるな、ということかな?)
を検討するとしています。

そして、
3.生前贈与財産への遺留分減殺請求権行使への対応

として2つの方策を掲げています。
まず、
(1)後継者の貢献等による株式等の価値の上昇分を後継者が保持できる方策、ですが、
後継者に生前贈与がなされ、その後継者の努力により業績が向上して株式評価額が上昇した場合、
現行制度では、当該株式の評価額は贈与時ではなくて相続開始時点での評価額となります。
これはつまり、遺留分の増加を生ずると共に、後継者の努力は評価されないという理不尽な結果を生みます。
そこで提言は、「株式の評価を生前贈与当時の価値に基づいて行う方策を工夫し…新規立法を視野に入れて検討する。」としています。

(2)遺留分減殺請求の対象となる生前贈与の範囲を一定期間に制限
遺留分減殺請求の対象となる生前贈与は、原則として相続開始前1年以内のものと規定されていますが、

民法1030条
 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によってその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前にしたものでも、同様である。


特別受益に該当する共同相続人への生前贈与については、原則として期間制限なしに減殺請求の対象となっています。
(ここでは、あくまでも遺留分に関しての説明で、相続税法19条の生前贈与加算に関する説明ではありません。)

第903条
 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。


そこで提言は、
「一定期間以前の生前贈与財産を遺留分減殺請求の対象から除外する」方策を検討するとしています。

最後に、
4.撤回の制限される死因処分の検討

として、
(1)撤回できない死因贈与契約の活用
と、
(2)撤回方法が限定された公正証書遺言の創設
を検討するとしています。

4.の説明は省きますが、
以上要するに、提言は、
中小企業の事業承継の円滑化を図るために、非上場株式等の事業承継税制の拡充、後継者問題への対応、遺留分等相続税法上の問題への対応を検討する、としています。

おそらく本年末の税制改正大綱で浮上すると思います。そう期待したいと思います。

なお、昨年10月に士業団体、中小企業関係団体、中小企業基盤整備機構、中小企業庁を中心として「事業承継協議会」が設置されました。
そして、同協議会において本年2月、「事業承継税制検討委員会」と「相続関連事業承継法制等検討委員会」が設置され、この6月に各々が「中間報告」を公表しました。

どちらがウサギか亀かわかりませんが、これまで説明してきました自民党経済産業部会事業承継問題検討小委員会の「提言」よりも事業承継協議会「中間報告」の方が図表入りでややわかりやすいかな、と思います。

興味のある方は是非ご覧になってください。

事業承継税制検討委員会中間報告(PDF、27頁)

相続関連事業承継法制等検討委員会中間報告(PDF、34頁)

中小企業の事業承継を巡る話はひとまずこれで終わりにします。

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