「光市母子殺害事件」と「新宿バス放火殺人事件」

  • 2008.04.25 Friday
  • 13:00
「光市母子殺害事件」と「新宿バス放火事件」は直接的には無関係な事件である。

「光市母子殺害事件」に係る裁判は「少年法51条」を巡るものだったと見ることができる。

第51条
 罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、10年以上15年以下において言い渡す。

今回の差戻し審は、
最高裁が示した、連続4人射殺事件(永山則夫連続射殺事件)に係る、いわゆる「永山基準」を踏襲したが、少年法51条につき、
「形式的基準は設けているが、精神的成熟度などの要件は求めていない」
として弁護側主張を退けたという事である。

他方、6人の死者を出した「新宿バス放火殺人事件」では、以前ご紹介した「刑法39条」適用の可否が争われた。

第39条
 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。


このように両者に繋がりは無いが、昨日の日経を読んでいて驚いたことがあった。
何かと話題になった、光市母子殺害事件の主任弁護人である安田好弘弁護士は、新宿バス放火事件でも弁護人を務めたということである。
ただ、それだけの話なんだが...

しかしまあ、
光市母子殺害事件の差戻し審判決が出た翌日に、その主任弁護人の「強制執行妨害」に係る東京高裁の「逆転有罪判決」が出るとは、
なんという巡り合わせであろうか。
単なる裁判日程の結果で作為など入り込む余地はないと確信するが、それにしても、と思った次第である。

ところで、
1982年に起きた「深川通り魔殺人事件」でも「刑法39条」の適用が争点となったのだが、

実は、同時代に起こされたこの二つの事件で、それぞれの被告に心神耗弱が認められた判決の瞬間、二人はまったく同じ反応をした。
ニヤっと笑ったのである

と記述した本がある。

日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』がそれである。

そして殺人者は野に放たれる
そして殺人者は野に放たれる
日垣 隆

文庫版はこちら。

そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)
そして殺人者は野に放たれる (新潮文庫)
日垣 隆

読むとわかるのだが、
両事件の犯人が現実に、
「判決の瞬間、ニヤっと笑った」
のではないのだが、その辺の事情は詳しく記されている。

この本は、実は、
我が国における「精神鑑定」のいい加減さを告発しているのである。
安田弁護士は、あの「麻原智津夫」死刑囚の主任弁護人であったということだが、
同死刑囚の精神鑑定につき、3名の精神科医はそれぞれ異なる内容の鑑定書を提出した(よね、確か)ことはまだ記憶に新しい。

この本は、
精神鑑定の困難性も含めてその結果が信頼に耐えうるのか否か、その辺の所を追求していると思われる。

また、
「刑法39条」をむやみに使いたがる法曹をも告発しているとも言える。

「私の弟は理不尽に殺され、兄は長く精神分裂病に罹患したままです。」と「あとがき」で述べる著者は、
全30巻以上に及ぶ、
「これを読破したという精神科医に、私は今まで会ったことがありません」と「解説」の「精神科医」に言わしめた、
『現代精神医学大系』を読破したということである。

それと並行して(たぶん)続けた10年間に及ぶ取材により執筆されたのが本書である。
私は、他人には「ソフト」は薦めても「本」なんてまず薦めることはないのだが、
まあ、この本は読んでもらっても悪くはないんじゃないかと思う。
奇をてらった内容ではないし。

というわけで、よろしければ、どうぞ。


コメント
おぉ、oh!さん。w

日垣さんとは確かFBフレンドでしたよね、直接のお知り合いなんでしょうか?
この本については毀誉褒貶がありますが、私は気に入ってます。
  • 税理士窪田
  • 2013/07/28 10:46 AM
あら…。
日垣さん。
  • oh!
  • 2013/07/28 2:05 AM
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

本日の名言・格言

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

税務訴訟と要件事実論
税務訴訟と要件事実論 (JUGEMレビュー »)
平野 敦士,佐藤 善恵,村井 淳一,岡野 訓

recommend

recommend

租税訴訟実務講座
租税訴訟実務講座 (JUGEMレビュー »)
大野 重国,木下 雅博,東 亜由美

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

recommend

法と経済―効率性と社会的正義とのバランスを求めて
法と経済―効率性と社会的正義とのバランスを求めて (JUGEMレビュー »)
ジェフリー・L. ハリソン, Jeffrey L. Harrison, 上田 純子

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM