「並びに」の読み方。−中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律−

  • 2008.09.16 Tuesday
  • 10:52
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」、いわゆる「経営承継円滑化法」の細部を詰めた施行規則、
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則」が5日付で公布された。

中小企業庁
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則について

税理士であれば、本法も規則も既にお読みになっていることと思うが、注意して読むべき箇所があることを知った。
まずは該当箇所をあげてみる。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律
第2条
この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
1 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第4号までに掲げる業種及び第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

2 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、卸売業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

3 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、サービス業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

4 資本金の額又は出資の総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

5 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの

すなわち、第2条は「中小企業者」の定義を規定する条文であるが、まず第1項で、
「次の各号のいずれかに該当する者をいう。」
としているので、1号から5号までの「いずれか」が該当することになる。

問題は、各号中の接続詞「並びに」の解釈である。
フツーに法律を学んだ方であれば、例えば第1号は、

〇駛楸發粒柬瑤禄仍颪料躋曚3億円以下の会社
であって、
⊂鏤使用する従業員の数が300人以下の会社と個人
であって、
製造業、建設業、運輸業その他の業種に属する事業を主たる事業として営むもの

と読み、
,撚饉劼箸靴討い襪里法△覆鵑猫△妨朕佑追加されているんだ?
と首を捻られるのではないかと思う。

というのは、条文を読む上で「並びに」と「及び」は「いずれも」と読むからである。
例えば、以前ご紹介した伊藤義一『税法の読み方 判例の見方』から抜粋引用すると、

「及び」も「並びに」も、ともに「そのいずれも」を意味する併合的接続詞であり、両者は同じ意味である。しかし、法令用語としての「及び」と「並びに」は・・・次のように厳格に使い分けられている。
(1)単純な併合的接続の場合、・・・
 「及び」を用いる。例えば、A氏とB氏と、そのいずれも、という場合には「A及びB」と、・・・
(2)併合される語句に段階がある場合、・・・
 大きい併合的接続に「並びに」を、小さい併合的接続に「及び」を用いる。
と説明されている(121頁)。

また、これもご紹介したと思うが、荒井勇『税法解釈の常識』においても同様の解説がなされている。

「及び」、「並びに」は、名詞と名詞、動詞と動詞などを並列的にならべてこれを併合的に連結する接続詞であり、並列されたものの「どちらも」の意味です。・・・ところで、これに対し、連結の段階がもっと複雑で二段階以上となっている場合には、大きな意味の連結、接続には「並びに」を用い、小さな意味の連結、接続にはには「及び」を用います。
(135、136頁)

ところがである。
「経営承継円滑化法」においては「並びに」と「及び」は従来のように解釈してはならないようである。

先ごろ届いた、雑誌「税理」の臨時増刊号「新法施行直前! 経営承継円滑化法の活用と事業承継トラブルへの対応」を眺めていたら、その旨が記載されていた。
以下引用する(同誌3頁)。

平川 条文では、各号共に同じで、その1号では「資本金等が3億円以下の会社“並びに”常時使用する使用人(条文上は「従業員」となっている。 by reotaro )の数が300人以下」というつなぎ規定で書いてありますから、ストレートに読むと両方クリアしなければいけない、という解釈を税理士はしてしまうのですが…。

佐藤 読み方として、例えば、1号は、「資本金3億円以下の会社」“アンド”常時使用する従業員の数が300人以下の会社“アンド”常時使用する従業員の数が300人以下の個人」となるわけです。
 つまり、製造業の場合、資本金が3億円以下の会社だったら、従業員が何人いても中小企業であり、また従業員300人以下の企業だったら、資本金が何百億円でもすべて中小企業になるということです。
 法律的にいえば、このような読み方が正しいのです。
なお、「平川」氏とは、税理士なら誰でも知っている平川忠雄税理士であり、「佐藤」氏とは、佐藤悦緒中小企業庁財務課課長のことである。

法律的にいえば、このような読み方が正しいのです。

ということであるが(強気だな)、従来の法令用語の使用方法とは異なる解釈方法で、コメントに困ってしまう、ホントに。

敢えて言わせていただくと、
“アンド(and)”ではなくて“オア(or)”と解釈されているような気がする。
“or”だったら「又は」あるいは「若しくは」を用いるんだけど、法令解釈のお約束事としては。

・アンド(and、)編

2 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社アンド(そして)常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、卸売業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

はて、この「アンド」って「並びに」そのものみたいな気がするが。

・オア(or)編

2 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社オア(あるいは)常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であって、卸売業(第5号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの

なお、「又は」と「若しくは」は、「及び」と「並びに」の使い方と同様である(あったと思う)。

確かに、「又は」と「若しくは」には単なる「or」だけではなく、「and/or」という意味もある。
すなわち「いずれか」だけではなく「いずれも」という意味がある。
(『税法の読み方 判例の見方』120頁)

でも、「及び」、「並びに」には「or」(いずれか)という意味はないと考えるのだが...さて?

それにしても、従来の使用方法に則った「条文の書き方」ができなかったのだろうか?



「という解釈を税理士はしてしまうのですが…。」

平川先生、税理士でなくても法学者なら誰でも同じ解釈をすると思いますよ、
ご遠慮されたんですね(笑)。

実は私も、遠慮した表現にしているのであるが。
コメント
れおたろうさん、こんばんは。

この記事を読んでから考えていましたが、
なんとな〜く、「及び」には「単なる並列」の意味と
「かつ」のように「密接不可分の並列」の異なる意味が
あって、今回の場合は「単なる並列」のような気がしますが
いかがでしょうか。

所得税法2条34号の「扶養親族」の定義規定と似たような
感じなのかなと思いましたが…。
  • IKE
  • 2008/09/18 11:27 PM
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