同時死亡時の保険金の受取人

  • 2009.06.04 Thursday
  • 12:42
昨日の日経朝刊に、
といってもここらでは夕刊はないのだが、
夫婦同時死亡時の保険金の受取りに関する、6月2日最高裁第三小法廷判決のことが掲載されていた。

すでに他のブロガーが紹介していると思って、
「ブログランキング」と「士業ランキング」をそれぞれ150位までチェックしてみたところ、
「ブログランキング」に1件のみ存在した。
まあ、税理士だからそんなものなんだろう。

その1件も新聞記事と大差のない内容だったので、
仕方がないので、もう少し詳細にご紹介しようと思う。
何故かって?
この最高裁判断は税理士として知っておくべき常識の範疇に含まれると解するからである。

事実の概要

1.昭和62年8月12日、夫Aは自身を被保険者、妻Cを保険受取人として、保険会社Bとの間で生命保険契約を締結した。
なお、当該保険契約はBからDに、次いでDから上告人に包括的に承継されている。

2.平成13年7月20日、夫Aと妻Cが死亡した(両者に於ける死亡時期の前後は不明)
夫Aには弟E以外に相続人は存在せず、妻Cには兄(被上告人)以外に相続人は存在しなかった。

3.以上の事実関係において、Cの兄(被上告人)が、商法676条2項により保険金等の支払を求めたものである。

上告人の主張

1.保険契約者兼被保険者(夫A)と指定受取人(妻C)が同時死亡した場合は、商法676条2項の規定により保険受取人を確定すべきである。

2.その場合、同項規定を準用するに当たっては、指定受取人が保険契約者兼被保険者よりも先に死亡したものと扱うべきである

3.従って、Cの相続人たる被上告人とCの順次の相続人であるEの両名が保険受取人になるべきである

ここで、
商法676条の条文と、同時死亡の推定に関する民法32条の2を見ておこう。

商法676条
 保険金額ヲ受取ルヘキ者カ被保険者ニ非サル第三者ナル場合ニ於テ其者カ死亡シタルトキハ保険契約者ハ更ニ保険金額ヲ受取ルヘキ者ヲ指定スルコトヲ得
2 保険契約者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハスシテ死亡シタルトキハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人ヲ以テ保険金額ヲ受取ルヘキ者トス

民法32条の2
 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

以上の両者の主張に対して、最高裁は以下のように判断した。

判旨

上告棄却(確定)

1.商法672条2項に於ける「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいう。
      (最高裁平成2年(オ)第1100号同5年9月7日第三小法廷判決

2.当該法定相続人は民法の規定によって確定されるべきであって、推定相続人の死亡の時点で生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない(民法882条)。

民法882条
 相続は、死亡によって開始する。

3.したがって、
指定受取人(妻Cのこと)と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者(夫Aのこと)とが同時に死亡した場合において、その者(夫Aのこと)又はその相続人(弟Eのこと)は、同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人には当たらないと解すべきである。

4.指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者との死亡の先後が明らかでない場合、
その者が保険契約者兼被保険者であっても、民法32条の2の適用を排除して、指定受取人(妻のこと)がその者(夫のこと)より先に死亡したとみなすべき理由はない。

5.AとCとは民法32条の2により同時に死亡したと推定され、AはCの法定相続人にはならないので、Eが保険受取人になることはなく、676条2項によりCの兄である被上告人のみが保険受取人となる

ま、こんなところである。
簡単なロジックなので解説は不要かと思われる。

判決文はこちらからどうぞ!

平成21(受)226 死亡給付金等請求,民訴法260条2項の申立て事件  
平成21年06月02日最高裁判所第三小法廷判決(棄却 大阪高等裁判所)


なお、「民訴法260条2項の申立て」という文字があるが、
この日の第三小法廷、実は2件についてまとめて判断を示したということである。

上記の判断は「プデンシャル生命保険(東京)」のもので、もう1件は「たきかわ農協(北海道)」のものであったらしい。
1審並びに2審の判決文を入手していないので詳細は不明であるが、

「たきかわ農協」事件、
保険契約者兼被保険者、共済契約者兼被共済者である夫と、受取人である妻が無理心中で同時死亡し、両者の子供も一緒に死亡したという、
実に悲しい事件であるらしい。

判決文を読むと、
ときに、社会の厳しい断面を垣間見せられ、切ない思いを感じること多々である。
言葉を失うのである。




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