「税法」VS「租税法」

  • 2008.02.04 Monday
  • 10:39
税に関する書籍名を見ますと、
「税法」と「租税法」というものがあります。

両者はどう違うのか?

私もそうでしたが、初学者が悩むことの一つかもしれません。
結論は、

「税法」=「租税法」

だと考えます。
単に呼称の差異にすぎないと思います。

ここで「税法の世界」における学会の歴史を顧みたいと思います。
我が国の税法におけるメジャーな学会には
「日本税法学会」と「租税法学会」とがあります。

我が国における租税法に関する最初(と思います)の学会、
「日本税法学会」は、「シャウプ税制」(シャウプ税制使節団のシャウプ博士が提出した「日本税制報告書」に基づく税制)が導入されてしばらく経った昭和26年に設立されました。

ところが、よくあることですが、
運営方法をめぐっての対立が起こり分裂し、昭和47年に「租税法学会」が設立されました。
日本「税法」学会と「租税法」学会、
どちらも租税に関する学会としては内容的には同根、同じということで、単に呼び名の違いということになります。

因みに「日本税法学会」の学会誌は「税法学」、「租税法学会」の学会誌(年報と称されています)は「租税法研究」となっています。

この分裂の原因ですが、
関東勢と関西勢の対立、すなわち「東大」VS「京大」の構図ではなかったかと思います。

「日本税法学会」の現在の理事長(会長)は田中治大阪府立大学経済学部教授(京大法学部卒)のようですが、田中教授以前は清永敬次京大名誉教授(京大法学部卒)でした。
清永敬次教授といえばミネルヴァ書房の『税法』ということになります。

税法 第7版 (法律学全書 5)
税法 第7版 (法律学全書 5)
清永 敬次

次は「租税法学会」の方ですが、現在は水野忠恒一橋大教授(東大法学部卒)が理事長をされているようですが、
それ以前は、実に20年間に亘って金子宏東大名誉教授(東大法学部卒)がされていました。

昭和47年に「租税法学会」が設立されたと前述しましたが、西暦では1972年にあたります。
すなわち、金子宏東大名誉教授の理事長在任期間は1972年から1992年ですので、設立時から理事長職にあられたのではないかと推察されます。

因みに、金子宏東大名誉教授の著書には『租税法』が、水野忠恒一橋大教授の著書にも『租税法』があります。

法律学講座双書 租税法 第11版
法律学講座双書 租税法 第11版
金子 宏

租税法 第3版 (法律学大系)
租税法 第3版 (法律学大系)
水野 忠恒

ところで入門者向けに有斐閣新書『税法入門』がありますが、こちらは金子宏、清永敬次ほか2名の共著になっています。
税法への取っ掛かりとしてはこの本が適切かもしれませんね。
似たような本に、北野弘久日大名誉教授の岩波新書『納税者の権利』がありますが、最初に読む本としては少々勧めかねます。
私の最初の洗礼は北野教授の『税法』と『納税者の権利』だったんですけどね。

税法入門 第6版 (有斐閣新書 A 61)
税法入門 第6版 (有斐閣新書 A 61)
金子 宏

納税者の権利 (岩波新書 黄版 174)
北野 弘久

税法学原論 第6版
税法学原論 第6版
北野 弘久

まあ、グダグダと書き連ねてきましたが、そんな訳で、
「税法」と「租税法」とは単に呼称の違いだと思うわけです。

なお、最近の傾向としては、両学会に参加されている方が多く見られます。
「多く」と言っても、租税法を専門とする学者の数は非常に少ないのが現状ですが。

ただし、税法の本質という点で言えば、2つの考え方があることは事実です。
税金を徴収する側の視点と税金を納める側の視点とが。

長くなりますので、これについてはいずれまた。


「日本の小売業の生産性は本当に低いのか− Shepardモデルによる数値実験 −」

  • 2007.12.11 Tuesday
  • 22:07
ESRI Discussion Paper Series No.193がアップされました。

日本の小売業の生産性は本当に低いのか− Shepardモデルによる数値実験 −」がそれです。

ただし、今回は英文です。厄介です。
しかも数式が「Shepardモデル」という私も見たことがないヤツ(実力のほどがわかります、恥ずかしい!)。
でも、数式は追っていけなくても、内容は、と言いますか、結論は理解できます。

せめて、要旨(結論)だけでもお読みいただければと思います。
以下引用します。

 失われた10年の「犯人」として生産性の低迷が槍玉に挙がっている。とりわけサービス業は伸び率とレベルの両面でアメリカに水をあけられているといわれる。最近では、政府からも経済成長のためのエンジンとしてサービス業の生産性向上を指摘する声があがり、そのために内閣府の経済社会総合研究所でも生産性研究のプロジェクトが立ち上がり始めている。
生産性の計測は確かに重要である。それが成長のために重要な役割を果たすことも否定はしない。しかし、その前になすべきことは生産性指標のもととなるインプットとアウトプットの定義を明確にすることである。とりわけ生産と消費が同時に生起するサービス業の場合、アウトプットの定義がきわめて難しい。銀行、保険、運輸、流通など単なる金額や輸送量などではサービスは評価できない。たとえば、人を1km運ぶサービスを家屋が転々とする地方の田園地帯と、ビルが密集する都心と同じアウトプットだと考える方がおかしいだろう。
本論文では、小売サービスに焦点を当て、アウトプットの定義を明確化した上で、それに基づく生産性指標を導き、近年における日本の経済環境の変化を踏まえたシミュレーション分析を行ってみたい。利用するモデルはShepard(JPE: 1991)にBertrand均衡の考え方を取り込んだものである。環境変化を表すシナリオは、(1)地域独占からBertrand型寡占競争へ、(2)消費者の選好の変化、(3)所得の低下、(4)賃金の下落、(5)労働の質の低下、という5段階を想定している。結果は以下のようにまとめられる。

上記のシナリオのもとではほぼ一貫して小売マージンは低下する。
独占から寡占への変化によって消費者の厚生は大幅に向上する。
消費者の評価が高いサービスのシェアが増えれば小売サービスの生産性は向上する。生産性は競争によって高まるとは限らない。
消費者の好みに生産性が左右される小売サービスでは、生産性の時系列比較や国際比較はほとんど意味がない。
真の政策は小売サービスにおける消費者の選択肢を増やすことである。生産性はその結果としてついてくるだけにすぎない。




以上、ご案内まで

法人税法違反の量刑因子に関する計量分析

  • 2007.12.03 Monday
  • 16:35
前にもご紹介したと思いますが、
内閣府経済社会総合研究所から『ESRI Discussion Paper』というペーパーが出されています。
で、本日付で「Series No.192」が公開されました。

タイトルは、
企業犯罪における「企業利益目的」と「個人利益目的」の違いは量刑に影響を与えるか−法人税法違反の量刑因子に関する計量分析−
というものです。

ポアソン回帰モデルを基礎に、行為目的の「企業利益」と「個人利益」の違いが量刑に及ぼす結果(効果)を論じたものです。

上のようにご紹介しますと、はなっから読みたくなくなるかもしれませんが、僅か20頁(本文)の論文で、しかも論文中に数式は使われてないため容易に読み進むことができます。
(私は楽しく拝見させていただきました。)
ご興味のある方はどうぞご覧下さい。

なお、読まれない方のために「要旨」を引用しておきます。

企業犯罪には、「企業利益目的」「個人利益目的」の2つの目的が存在する。裁判所の判決も、その目的の違いが量刑に影響する可能性を認めている。本論文は、法人税法違反の事例を用いて、その目的の違いが量刑に与える影響を計量分析的に検証している。その結果、企業利益目的で犯罪を犯すことは量刑にマイナスの影響を与えることが分かった。この結果は、社会的にみて妥当であると考えられる。しかし、犯罪抑止の観点からは必ずしも望ましいものとは言えない。それゆえ、企業犯罪における量刑論において、責任と予防の問題を再考する必要があると思われる。
また、量刑に関する計量的分析を行うことは、裁判・量刑過程の透明化に資するものであり、2009年から始まる裁判員制度に向け、その応用が期待される。



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